世界の片隅で生きています

社会不適合者の生きる道

新疆ウイグル自治区ウルムチに行って感じたこと

私は2020年の1月から2月の半ばまで約1ヶ月半、新疆ウイグル自治区ウルムチという都市に滞在していました。

当時上海に留学していた私は、冬休みの期間を利用して、ウルムチで生活している彼氏の両親の元にお世話になりました。

 詳しくは下の記事からどうぞ。

shijiedejiaoluo.hatenablog.com

 

今回は、新疆ウイグル自治区ウルムチでの生活を通して、私が感じたことをまとめてみました。

 

空気に匂いを感じた

これはウルムチの空港から、一歩外に出た瞬間に思いました。

言葉で表現するのが非常に難しいのですが、独特な匂い(臭い?)がしました。

強いて例えるならば、スパイスの香りのような、異国情緒を感じさせるような匂いだったと記憶しています。

それが冬の時期に中国でよく発生する高濃度のスモッグによるものなのか、それとも私の脳が勝手にそう錯覚させたのかはよくわかりませんが、とにかく空気に匂いがありました。

少し時間が経つと、私の鼻も慣れてしまい何も感じなくなりましたが、ウルムチに初めて降り立った時の記憶として今でも印象に深く残っています。

  

警備が桁違いに厳重

ある日、彼のお父さんが運転する車に乗って、みんなで遠出をする機会がありました。

外出先から家に帰る途中で、近くにあったガソリンスタンドに立ち寄りました。

お父さんはガソリンスタンドの入り口で車を一時停車すると、みんな(お父さん以外)が続々と車から降り始めました。

私は状況がよくわからなかったのですが、とりあえずみんなと同じように車を降り、ガソリンスタンドの出口でお父さんの車を待ちました。

後々理由を訊いてみると、新疆では安全対策の面から、運転手しかガソリンスタンド内に立ち入ることができないらしいのです。

しかも、全ての車は給油前に車輌検査を受けなければいけない上に、運転手は身分証の提示が必要とのことでした。

 

警備が厳しいのは、ガソリンスタンドだけではありません。

新疆ではスーパーや公園、マンションの出入口といった、不特定多数の人の出入りがある場所には必ずセキュリティゲートが設置してあります。

スーパーでちょっと買い物をしようと思っても、入り口のセキュリティゲートで手荷物検査を受け、金属探知機をくぐらなければ、お店の中に入ることさえ許されません。

 

またある日、新疆名物の大盘鸡(ダーパンジー)発祥の地であるとされている沙湾(シャーワン)市に本場の大盘鸡を食べに行くことになりました。

シャーワン市はウルムチから西に185km程離れた場所に位置し、車でも2時間半ほど掛かります。

その日は高速道路を利用して行ったのですが、料金所には検問所が常時設置されており、例のごとく、車を降りて手荷物検査や身分証明書の提示をしなければなりませんでした。

中国国籍の人は中国の身分証を持っていて、それを提示すれば身分の証明が簡単にできますが、私のような外国人は身分証の代わりとしてパスポートを提示するしか方法がありませんでした。

しかし、パスポートの提示だけでは不十分だったらしく、彼の両親が検問所の職員と何やら交渉してくれていました。(私の中国語力では、何を言われているのか理解できなかった…)

最終的には、私のパスポートを検問所に預けることを条件に、市を跨ぐことが許されました。 

 

このように新疆では、テロに対する警戒が街の至る所で日常的に行われています。

ある新疆出身の友人が、「今の新疆には街中に警察がいっぱいいるから安全だ。」と言っていましたが、日本人の私からすると「警察がいっぱいいるのって、安全な証拠なの?」と認識の違いに少し戸惑いを覚えました。

 

ウルムチの冬は寒いではなく痛い

ウルムチの冬は毎年11月3日から翌年の4月8日まで、150日間にも及びます。

12月の平均気温は−15℃前後、1月には−25℃前後まで冷え込みます。

特に朝晩の冷え込みが厳しいウルムチですが、私は彼のお母さんとよく近所の公園に行って、ウォーキングをしていました。

公園までは2人でおしゃべりをしながら歩いて、公園に着いたらお母さんは一人でジョギングを始めます。

私は走るのが嫌いなので、雪でツルツル滑る路面に戦々恐々としながら、自分のペースでウォーキングを楽しんでいました。

f:id:shijiedejiaoluo:20210620102315j:plain

新疆の未開発地。辺り一面雪景色。

中国では、おじさんやおばさんたちが公園で音楽を流して集団でダンスをするという一種の文化があります。(广场舞と言います。)

公園内を歩いていると、氷点下の気温でありながら、おじさん、おばさん達がコートを着込んで、楽しそうに社交ダンスを踊っていました。

流れている音楽もどこか新疆っぽい、中東系の音楽だったのが印象的でした。

そんなおじさん、おばさんを尻目に歩いていると、物の10分か15分ぐらいで私は手足の感覚が次第になくなってきます。

そんな時は全身汗びっしょりのお母さんを探して、早めに家に帰らせてもらっていました。

また外でスマホを操作していると、気温が低すぎるため、スマホの電源が突然落ちるという現象にも遭遇しました。 

暖かい場所に移動すれば、また問題なく使えるようになりますが、今まで経験したことのない現象に驚きました。 

 

まとめ 

同じ中国と言っても、上海と新疆では気候も食文化も、話す言葉も全く異なります。

私は新疆の人に対して、自己主張が比較的控えめ(沿岸部の中国人よりも)で、どこか寡黙なイメージを持つようになりました。

その反面、日本からきた見ず知らずの日本人である私に、彼の両親や親戚はとても良くしてくれました。

 

私が新疆に対して、どこか懐かしい感覚を抱いたのには、新疆にまだ残っている一部分が昔の日本の姿に重なったからかもしれません。